産業医に求められる新型インフルエンザ対策 -新型インフルエンザ流行期別チェックリストと対策支援ツール集-
| 企業向け新型インフルエンザ対策研究
 
第2章 国内発生早期 シナリオ
 
 20XX年10月9日には、イタリアから成田空港に到着した2人の日本人が新型インフルエンザに感染していることが機内検疫により発見された。同16日には福岡で渡航歴のない小学生の感染が確認され、ついで熊本の小学生らの感染も報告された。これらは感染症予防法第6条第7項の「新型インフルエンザ等感染症」の一つに該当すると見なされ、感染者は全て強制入院の対象となった。政府は、この事態を受け、新型インフルエンザ対策行動計画の対策レベルを第1段階(海外発生期)から第2段階(国内発生早期)に引き上げた。

 前回の柳井製作所への出務以降、神田先生は診療の合間に新型インフルエンザに関する情報を集め、わかりやすくまとめた上で森山課長にメールするようにしていた。また、森山課長も神田先生からの情報や厚生労働省が示す「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」等を参考に、BCPの作成を進めていたが、経営者の柳井社長の理解が得られないこともあって、対策は遅れ気味であった。

 一方、新型インフルエンザは勢い留まること知らず、このままでは柳井製作所にも早晩感染者が発生することが予想された。そのため、神田先生は次回の産業医出務から、より踏み込んで予防活動や管理体制を構築する必要があると考えていた。森山課長と相談し、これらの問題を円滑に解消するために、10月の産業医活動では安全衛生委員会での講話や新型インフルエンザ対策にも範囲を広げて職場巡視・健康相談などを実施する運びになった。

〜新型インフルエンザ対策行動計画の対策レベルについて〜
 新型インフルエンザへの対応は、その患者発生状況などに応じて取るべき対策が異なってきます。したがって、新型インフルエンザ感染者の発生状況および症状や危険性などについて産業医は概略的に把握しておく必要があります。
 WHOでは、新型インフルエンザの感染発生に対する警告フェーズとして、6つのフェーズを示しています。ヒト‐ヒト間での集団的な感染が世界のどこかで確認されると「フェーズ4」が宣言され、新型インフルエンザの発生となります。WHOのアラートレベルは世界中の様々な機関で行動計画の発動基準となっています。日本政府の行動計画では、新型インフルエンザの発生前からまん延期を経て小康状態に至るまでを5段階(前段階(未発生期)・第一段階(海外発生期)・第二段階(国内発生早期)・第三段階(感染拡大期・まん延期・回復期)・第四段階(小康期))に分類し、各段階での「政府の取り組み」と「事業者の取るべき対策」を定めています。
 しかし、これらのフェーズはインフルエンザウイルスへの人類の警戒レベルを示すものであり、ウイルスの症状や危険性までは反映していないことに留意する必要があります。そのため、産業医はこれらに関する情報を定期的に収集することに併せて、ウイルスの症状や危険性に関する情報を加味しながら、事業所としての対策を検討する必要があります。

この流行段階において、神田先生は嘱託産業医としてどのような対策支援が出来るでしょうか?
→具体的な解答例(チェックリスト)


文責:環境疫学研究室/