産業医に求められる新型インフルエンザ対策 -新型インフルエンザ流行期別チェックリストと対策支援ツール集-
| 企業向け新型インフルエンザ対策研究
 
第3章 感染拡大期・まん延期・回復期 シナリオ
 
 20XX年10月22日政府は、今回の新型インフルエンザが中等度の病原性であることを踏まえた新たな「基本的対処方針」を決定し、今後の対策を水際対策から感染拡大の防止と糖尿病などの持病があり重篤化する恐れのある人の感染防止・中等症以上の患者治療に集中するとした。これを受けて当初、感染者は強制入院の対象となったが、軽症患者に関しては自宅療養する方針に変更された。11月12日には世界保健機関(WHO)は、世界的流行病(パンデミック)であることを宣言し、警戒水準をフェーズ6に引き上げるとともに、国内での流行もこの頃には日本全域に拡大していた。

 11月2日、ある社員から上司に「昨晩から熱があり体調が悪い。今朝も37.5度の熱があり休ませてほしい」という電話があった。上司は「今日は大事をとって休むように」とだけ言って電話を切った。翌日、上司との打ち合わせの中で、この「熱があり休んでいる社員」について偶然知った森山課長は、ついに柳井製作所からも新型インフルエンザ感染者が出るかもしれないと感じ、集団感染が発生することを想像すると恐ろしくなった。そのため、森山課長は神田先生に連絡し、新型インフルエンザと診断された場合の対処法を聞いた。また、このような情報が会社として把握できていないことや、このような社員へ適切な指示が出来ていないことは非常に問題だと感じた。

森山課長が必要と感じたこと
・従業員が行うべき感染予防策
・従業員の情報収集・情報提供
・実際の感染時(家族を含めた)の対応、休業の取り扱い
・持病のある人や妊婦などの高リスク者への配慮       など

 夕方になり、上司を通じてからこの社員が「新型インフルエンザ」と診断されたと連絡があり、森山課長は慌てて神田先生に連絡した。その後、他の社員やその家族たちに次々感染者が発生したが、神田先生は、森山課長と定期的に情報交換をしながら、これらの問題の解決に当たっていた。

 一方で、マスクや消毒薬が品切れ状態となり、確保が困難であることや、ワクチン接種の順番など他の問題にも直面していた。この状況になると、神田先生はこれまでの感染予防から、「いずれ従業員の多くが発病するから、それを遅らせるために対策を行う」といった感染拡大防止を目的とした対策へと切り替えることとした。また、以前手洗いや咳エチケットについて講話や社内報を通じて周知したものの、現場では十分な手洗いは行われておらず、マスクの着用についても不適切なものが多く見受けられたため、再度ポスター等を使い手洗いとマスクの適正使用について、周知徹底を行うこととした。

この流行段階において、神田先生は嘱託産業医としてどのような対策支援が出来るでしょうか?
→具体的な解答例(チェックリスト)


文責:環境疫学研究室/