産業医に求められる新型インフルエンザ対策 -新型インフルエンザ流行期別チェックリストと対策支援ツール集-
| 企業向け新型インフルエンザ対策研究
 
第4章 小康期・準備期 シナリオ
 
 その後、日本全土に亘って大いに猛威を振るった新型インフルエンザであったが、20XX+1年3月に入って大きな流行波を形成した後は、次第に終息に向かっていった。同年6月31日には、厚生労働省が新型インフルエンザの最初の流行が沈静化したとの見解を表明し、第一波の終息を宣言した。同年9月10日には、WHOがフェーズ6からポスト・パンデミックへの引き下げを決定、世界的な大流行の終結を宣言した。これまでのところ大きな流行は確認されていないが、今後新たな新型インフルエンザが流行する可能性は大いにある。

 柳井製作所でも多数の感染者を出し、製造ラインの班長が多数感染したことにより、1週間の製造中止を余儀なくされたり、経理担当者の休業により銀行からの資金調達作業が遅延したりするなど事業継続にも若干の影響があった。しかし、流行後半はマスク、咳エチケット、手洗いなど個人レベルでのインフルエンザ対策を中心に神田先生が繰り返し教育指導することで、むしろ周辺の事業所と比較しても低水準の発生率に抑えることが出来た。安全衛生委員会でも毎月感染者状況を報告するようにしていたが、ここ数月0名であったことと、今回のWHOによるポスト・パンデミックへの引き下げの決定を契機に、対策の終了を決定し、今回一連の対策の評価と今後の準備を話し合うことになった。

 対策の評価の際には、柳井社長から直々に、一連の対策を推し進めた神田先生と森山課長に対して感謝のお礼があり、会場は一斉の拍手に包まれた。そして、これまで会社として感染症対策を講じてこなかった反省と、今後の新たな新型インフルエンザ発生に備えて会社として準備していく方針が表明された。神田先生は対策が進んでいくことに嬉しさを感じる一方で、今後もやるべきことはたくさんあると身が引き締まる思いでそれを聞いていた。

〜WHOフェーズ6とウイルスの病原性〜
 2009年のパンデミックでは、当初、高病原性のウイルスを想定していましたが、感染が拡大するにつれ、季節性インフルエンザとほぼ同様の病原性ということがわかり、社会機能にも大きな影響はありませんでした。最大の被害を想定しておくことは重要ですが、高病原性のウイルスを想定した計画をそのまま実施すると、実態と解離してしまう危険性があります。例えば、WHOのフェーズはインフルエンザの地域的広がりを表すものであり、ウイルスの病原性を勘案したものではありません。そのため、産業医はWHOのフェーズにとらわれず、企業が対策を行う上で必要となる正確な情報を提供する必要がありますし、企業もそのような情報をもとに事前の計画に対して柔軟に対応する必要があります。

この流行段階において、神田先生は嘱託産業医としてどのような対策支援が出来るでしょうか?
→具体的な解答例(チェックリスト)


文責:環境疫学研究室/